この記事を書いた人

のぼじん|腎臓内科専門医 | CKDガイドラインシステマティックレビュー委員
医学論文や診療ガイドラインに基づいた情報発信を大切にしています。CKDと向き合うには、検査値を知ることに加えて、食事・運動・服薬・通院などを生活の中で続ける工夫も大切です。このブログでは、CKDの検査値の見方や生活習慣の考え方、努力だけに頼らず行動を続けるための仕組みを、専門医の立場から一緒に考えていきます。

この記事を書いた人

のぼじん|腎臓内科専門医 | CKDガイドラインシステマティックレビュー委員
医学論文や診療ガイドラインに基づいた情報発信を大切にしています。CKDと向き合うには、検査値を知ることに加えて、食事・運動・服薬・通院などを生活の中で続ける工夫も大切です。このブログでは、CKDの検査値の見方や生活習慣の考え方、努力だけに頼らず行動を続けるための仕組みを、専門医の立場から一緒に考えていきます。
CKDがあり、コーヒーを飲んでよいか迷っているなら、まず知ってほしいのは「コーヒーにはCKDに対して良いエビデンスがある」ということです。
そのうえで、血清カリウム値、1杯あたりの量、飲む時間帯を見れば、自分に合った付き合い方が考えやすくなります。
相談者さん腎臓が悪いと言われました。コーヒーはやめた方がいいですか?



コーヒーには、CKDに対して良いエビデンスがあります。ただし、コーヒーにはカリウムが入っています。血清カリウム値と飲み方は一緒に見ていきましょう。
こんな経験はありませんか?
この記事では、そんなあなたの疑問を解決します。
腎臓内科専門医として、日々の外来で患者さんから聞かれる「コーヒーは飲んでいいですか?」という質問への考え方をまとめました。


結論から言うと、CKDだからといってコーヒーを全員がやめる必要はありません。
むしろ近年の研究では、コーヒー摂取が腎臓の結果に良い方向で関連していることが報告されています。
たとえば、コーヒー摂取と腎アウトカムをまとめたメタ解析があります。
この研究では、コーヒーを飲む人でCKD発症、透析や腎移植が必要になる末期腎不全、尿にアルブミンという蛋白が出る状態、CKD関連死亡が低い方向に関連していました。
シンガポールの大規模コホート研究でも、1日2杯以上のコーヒー摂取は、末期腎不全のリスクが低いことと関連していました。
また、米国の3つの大規模前向きコホートでは、コーヒー摂取が全死亡や心血管死亡の低さと関連していました。


この流れは、エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023でも前向きに整理されています。CQ 6-3では、「コーヒーには抗酸化作用や抗炎症作用を示す物質が含まれ、CKD発症や進展を抑制する効果が期待される」、とまとめられています。さらに、少なくともコーヒーが腎臓に害を与える可能性は低い、という趣旨で整理されています。
つまり、CKDだからコーヒーを避ける、というところから始める必要はありません。
適量であれば、むしろ前向きに考えられる飲み物です。
一方で、「良いエビデンスがある」ことと、「治療薬と考えて飲む」ことだと私は考えています。
ややこしい話をしてしまうのですが、今までご紹介した研究は観察研究です。コーヒーを飲む人と飲まない人を比較していますが、両者で食事、運動、喫煙、仕事など他の要因が異なっているのかもしれません。研究では、できる限りこうしたものを調整していますが、全てではありません。
そのため、医学研究では治療薬の効果を判定するのに無作為化試験(別のいいかたでA/Bテストです)というものを行っていますが、コーヒーの効果をみた無作為化試験は現時点で行われていません。
私はコーヒーが大好きなので、コーヒーに肩入れしたい気持ちはあるのですが、2026年6月現在までの研究結果から治療薬のように考えて積極的に飲みましょうとまでは言えません。
嗜好目的に飲んでいただくことは良いです。ただ、好きでもないのに治療のためだと頑張って飲まなくても大丈夫です。
では、CKD患者さんがコーヒーを飲む際に注意すべきポイントはいつでしょうか?
それは次に説明する血清カリウム値が高い場合です。
CKDとコーヒーには良いエビデンスがあり、本邦のガイドラインでも前向きに解釈されています。ただし、治療薬と考えて飲むことを私は推奨しません。血清カリウム値に注意しながらCKD患者さんでも継続できる嗜好品という位置づけです。
CKDでコーヒーを考えるとき、最初に確認したいのは血清K値(血液中のカリウム値)です。
カリウムは体に必要なミネラルですが、腎機能が低下すると血液中にたまりやすくなります。血清カリウム値が高くなりすぎると、生死に関わる重篤な不整脈につながることがあり注意が必要です。
以前、CKDの食事療法ではカリウム制限の目安が示されてきました。たとえば、日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」では、次のような表が使われています。
| CKDの段階 | カリウム制限の目安 |
|---|---|
| G1〜G2 | 制限なし |
| G3a | 制限なし |
| G3b | 2,000 mg/日以下 |
| G4〜G5 | 1,500 mg/日以下 |
| G5D(透析) | 2,000 mg/日以下 |
CKDのstageについては以下の記事もご参考ください


この表だけを見ると、「G3bからはコーヒーも厳しく制限しないと」と感じるかもしれません。
ただし、最近のガイドラインでは、「CKDの段階だけで一律に制限する」よりも、「血清カリウム値と背景を見て個別に調整する」という考え方が強くなっています。
「個別に」 、ここが重要です。
血清カリウム値は、腎機能だけで決まるものではありません。
内服薬、糖尿病や心不全の有無、便秘なども関係します。
同じeGFRでも、血清カリウム値が安定している方と、上がりやすい方がいるのです。
2023年に発表されたエビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023でも、CKD患者さんに対して画一的に野菜や果物を制限することは勧められず(野菜や果物にカリウムが多いと言われています。コーヒーも「豆」ですよね)、患者さんの状態や忍容性に応じた個別化が大切だと整理されています。
国際的な腎臓病のガイドラインを作成しているKDIGOの2024年のガイドラインでも、カリウム管理は「食事のカリウムだけを見る」のではなく必要に応じて個別に評価しましょうとされています。


つまり、コーヒーに関しても個別に考えましょうということです。
現時点で沢山コーヒーを飲んでいて血清カリウム値が落ち着いているかたはカリウム制限する必要はないですし、逆に血清カリウム値が高い場合はカリウム制限が必要になってくるかもしれません。



G3bと言われたら、コーヒーはやめた方がいいですか?



G3b頃からではカリウムに注意が必要になります。ただ、血清カリウム値が安定しているかたまで一律に禁止とは考えません。検査値を見ながら、量を調整するのが現実的です。
血清カリウム値が高い方、カリウム吸着薬を使っている方、過去に高カリウム血症を起こした方は、自己判断で増やさず主治医と相談してください。
コーヒーとカリウムの話で、ぜひ知っておいてほしい資料があります。
それが、文部科学省が公開している日本食品標準成分表(八訂)増補2023年です。
この成分表を見ると、コーヒーだけでなく、果物、野菜、芋類、牛乳、ココアなど、いろいろな食品のカリウム量を確認できます。
「この食品はカリウムが多いのかな」と気になったとき、自分で調べる入口になります。
ただ、見かたには少し注意が必要です。
日本食品標準成分表は、原則として可食部100gあたりの成分値を示します。
これは食品どうしを比較するうえでは便利です。
しかし、あなたが実際に食べたり飲んだりする量とは違うことがあります。
コーヒー関連のカリウム量を見ると、かなり印象が違います。
| 食品 | カリウム量 |
|---|---|
| コーヒー 浸出液 | 65 mg/100g |
| 缶コーヒー 無糖 | 68 mg/100g |
| コーヒー飲料 乳成分入り 加糖 | 60 mg/100g |
| インスタントコーヒー | 3,600 mg/100g |
| ピュアココア | 2,800 mg/100g |
| ミルクココア | 730 mg/100g |
この表だけを見ると、インスタントコーヒーはとても危険に見えます。
3,600 mg/100gという数字は、G4〜G5の目安である1,500 mg/日を大きく超えています。
しかし、ここで立ち止まる必要があります。
インスタントコーヒーの3,600 mg/100gは、「粉を100g使った場合」の数字です。
100mlのインスタントコーヒーを飲んだ場合の数字ではありません。
一般的なインスタントコーヒーは、1杯あたり粉約2gが目安です。濃いめに作っても3g程度でしょう。
計算すると、見え方が変わります。
| 飲み方 | 1杯あたりの目安 |
|---|---|
| ドリップコーヒー150g | 約98 mg |
| インスタントコーヒー粉2g | 約72 mg |
| インスタントコーヒー粉3g | 約108 mg |
上の図のように、100gあたりの数字と1杯あたりの数字は分けて考える必要があります。
インスタントコーヒーは、抽出したコーヒー液から水分を飛ばし、粉末にしたものです。
そのため、100gあたりで見るとカリウムが濃縮されて見えます。
日本食品標準成分表は、カリウム量を自分で確認できる便利な資料です。ただし、多くは100gあたりの数字です。インスタントコーヒーのように、実際の1杯量に直して考えましょう。
カリウムの管理で大切なのは、コーヒーだけを切り取らないことです。
コーヒー1杯のカリウム量は、極端に多いわけではありません。
それでも、毎日何杯も飲む方では積み上がります。
さらに、ほかのカリウム源が重なると、全体として多くなることがあります。
たとえば、次のようなものは一緒に確認したい食品です。
ここで見落とされやすいのがラテです。ブラックコーヒーに比べて、ラテは牛乳が加わります。
牛乳にもカリウムは含まれます。
そのため、コーヒーとしては同じ1杯でも、ブラックとラテでは考え方が変わります。



コーヒーは1杯だけですが、毎朝カフェラテにしています。



それなら、コーヒーだけでなく牛乳の量も合わせて見ましょう。血清カリウム値が安定していればそのまま楽しんでいただいていいですが、高めなら量の調整が必要です。
高カリウム血症がある方では、コーヒーだけに原因を求めるより、食事全体を見た方が実践的です。
コーヒーを残したいなら、果物や野菜ジュース、芋類、減塩塩など、ほかのカリウム源を調整する選択肢もあります。


上の図では、コーヒーを食事全体のカリウム源の一部として位置づけています。
コーヒーだけを見て判断するより、全体の中で考える方が現実に合っています。
コーヒーだけを見て判断する必要はありません。杯数、濃さ、ラテの牛乳、果物や野菜ジュースなどの他の原因を合わせて、食事全体のカリウム負荷として考えましょう。
コーヒーを飲む場合、カリウムだけでなく時間帯も気にしてみましょう。
カフェインには覚醒作用があります。
朝や日中には助けになることがありますが、夕方以降に飲むと睡眠に影響する方がいます。
近年、コーヒーを飲む時間帯と死亡リスクの関連を調べた研究も報告されています。
米国成人を対象とした観察研究では、朝にコーヒーを飲むパターンが、全死亡や心血管死亡の低さと関連していました。
一方で、一日中だらだら飲むパターンでは、同じような明確な関連は示されませんでした。
これも観察研究なので、朝に飲む人は生活全体が整っていたなど他の要因は考えられます。
それでも、飲むタイミングを調整するだけで、良い影響がでるかもしれないので、やってみてもいいかもしれません。
CKDでコーヒーを飲んでよいかは、単純な二択ではありません。
コーヒーにはCKDに対して良いエビデンスがあります。
一方で、血清カリウム値が高い方や、高カリウム血症を起こしたことがある方では注意が必要です。
日本食品標準成分表を見れば、コーヒー以外の食品も含めてカリウム量を確認できます。
ただし、100gあたりの数字をそのまま1杯分、1回分と誤解しないことが大切です。
大事なのは、あなたの状態に合わせて考えることです。
2014年版のような目安表は参考になりますが、最近のガイドラインでは、一律に削るよりも、血清カリウム値を見て個別に調整する方向になっています。
コーヒーにはカリウムがはいっています。
しかし、毎日の楽しみとして大切にしている方も多い飲み物です。
だからこそ、ただ禁止するのではなく、検査値と生活に合わせて選ぶ。
その姿勢が、長く続けられるCKDケアにつながると考えています。






関連する記事はまだ見つかりませんでした。