尿蛋白とは? 腎臓が悪くなる”速さ”に関わる大事なサイン

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のぼじん|腎臓内科専門医 | CKDガイドラインシステマティックレビュー委員

医学論文や診療ガイドラインに基づいた情報発信を大切にしています。CKDと向き合うには、検査値を知ることに加えて、食事・運動・服薬・通院などを生活の中で続ける工夫も大切です。このブログでは、CKDの検査値の見方や生活習慣の考え方、努力だけに頼らず行動を続けるための仕組みを、専門医の立場から一緒に考えていきます。

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「尿蛋白が出ている」と言われたけれど何が問題なのかわからない——この記事を読めば、尿蛋白が腎臓の”これから”を左右する大事なサインであることがわかります。

相談者さん

健診で尿蛋白が出ていると言われたのですが、腎臓にどう悪いのですか?

のぼじん

気になりますよね。実は尿蛋白は腎臓の未来を読むうえでとても大事なんです。一緒に確認していきましょう。

こんな経験はありませんか?

  • 健診で「尿蛋白(+)」と書かれていたけど、だからどうなのと感じた
  • 「尿に蛋白が出ている」と言われものの、体調は何も変わらないのに・・と思った
  • 尿蛋白が悪いと聞くけど、何をすれば減らせるのかがわからない

この記事では、そんなあなたの疑問を解決します。

  1. 尿蛋白ってそもそも何? — 腎臓のフィルターからの「SOS信号」です
  2. なぜ尿蛋白が大事なの? — 腎臓が悪くなる「スピード」を映し出す数字
  3. 尿蛋白を減らすためにあなたは何ができる? — 実は、自分だけの力でスピードを緩めることができるます

腎臓内科専門医として、日々の外来で尿蛋白の結果をもとに患者さんに腎臓の状態をお伝えしています。その説明の仕方をまとめました。

目次

1. 尿蛋白ってそもそも何? — 腎臓のフィルターからのSOS

腎臓は「フィルター」の役割をしている

腎臓は、血液の中から体に不要な老廃物をこし取って、尿として外に出す臓器です。いわば、体の中にある「フィルター」のような存在です。

正常なフィルターであれば、老廃物はしっかり通しつつ、体に必要な蛋白質は血液中に残してくれます。つまり、正常な状態では、尿に蛋白はほとんど出ません。

コーヒーフィルターで考えるとわかりやすい

コーヒーを淹れるとき、フィルターがしっかりしていれば、コーヒーの粉はフィルターに残り、透明なコーヒーだけがカップに落ちてきますよね。

しかし、フィルターの目が粗くなったり、穴が開いたりすると、本来は通さないはずのコーヒーの粉がカップに漏れ出してしまいます。

腎臓もこれと同じです。腎臓のフィルターが傷むと、本来は通さないはずの蛋白質が尿に漏れ出してしまいます。これが「尿蛋白が出ている」という状態です。

相談者さん

じゃあ尿蛋白が出ているということは、腎臓のフィルターが傷んでいるということですか?

のぼじん

そのとおりです。尿蛋白は、腎臓のフィルターが傷んでいることを教えてくれるサインなんです。

ここがポイント

尿蛋白は「腎臓のフィルターが傷んでいるサイン」。
尿に蛋白が出ていること自体が、腎臓からのSOSです。

2. なぜ尿蛋白が大事なの? — 腎臓が悪くなる「スピード」を映し出す

尿蛋白は「今」ではなく「これから」を示す

尿蛋白が大事な理由は、腎臓がこれからどれくらいのスピードで悪くなりそうかを強く反映する指標だからです。

これは大規模な研究でも繰り返し示されていることです。尿蛋白が多い人ほど、将来の腎機能低下のスピードが速くなりやすい。逆に、尿蛋白が少なければ、その後の経過は緩やかになりやすいのです。

つまり、尿蛋白は「いま腎臓がどれだけ悪いか」というよりも、「このまま放っておくと、どれくらいの速さで悪くなりそうか」を教えてくれる数字です。

上の図のように、同じ腎機能の方でも、尿蛋白の量によってこれからの経過は大きく変わります。尿蛋白が多いほどスピードは速く、少ないほどゆっくりになりやすい。この違いが、将来の腎臓の状態を大きく左右するのです。

「スピードが見える」と、やるべきことが見えてくる

ここがとても大切なところです。

「腎臓が悪い」とだけ言われても、漠然とした不安が広がるばかりで、何をすればいいかわかりません。しかし、「尿蛋白が多い=悪くなるスピードが速い」とわかると、話は変わります。

「スピードを緩めるために、何ができるだろう?」 という問いが生まれるからです。

方向性が見えると、人は動けるようになります。「どうしよう」という不安のなかにいるときが一番つらいのであって、「こうすればいい」が見えた瞬間に、気持ちはずいぶん楽になるものです。

尿蛋白という指標を知ることは、まさにその「方向性」を手に入れることなのです。

補足:健診の「+」「−」だけでは正確な判断が難しい

健診では、尿蛋白の結果が「(−)」「(±)」「(+)」のように記号で書かれていることが多いと思います。これは試験紙法(定性試験)と呼ばれるスクリーニング(ふるい分け)検査です。

この方法は簡単で便利なのですが、その日の飲水量——つまり尿が薄いか濃いかによって結果がぶれやすいという弱点があります。たくさん水を飲んだ日は尿が薄まって蛋白が少なく見え、水分が少ない日は濃縮されて多く出ることがあるのです。

そのため、外来で尿蛋白の増減を正確に追いたいときには、UPCR(尿蛋白クレアチニン比) という定量検査を使います。UPCRを使うと1日に推定何gくらい尿蛋白が出たかが数字で出ます。これは尿の濃さの影響を補正できるため、より安定した評価ができます。

通院中の方で、尿蛋白の推移をしっかり確認したい場合は、かかりつけの先生に「尿蛋白を測定することはできますか?」と聞いてみてもよいかもしれません。

3. 尿蛋白を減らすために何ができる? — 自分の力でスピードを緩める

尿蛋白を押し上げる3つの大きな要因

「尿蛋白が多い=スピードが速い」と聞くと、不安になるかもしれません。しかし、ここからが大切なお話です。

実は、外来で尿蛋白を押し上げている原因として私が頻繁に出会うのは、以下の3つです。

  1. 塩分の摂りすぎ
  2. 高血圧
  3. 体重の増えすぎ

腎炎という腎臓に炎症が起こるような病気でも尿蛋白は増えます。そのため、腎炎患者さんの病気の活発さが増すことも尿蛋白が増える原因になります。この場合は、治療の強化が必要になります。

ただ、そういった問題より頻繁に出会うのが上に挙げた塩分・高血圧・体重です。これらの要因が重なると尿蛋白は増えやすくなります。

そして重要なのは、この3つはどれも、自分自身で改善できる余地があるということです。

なぜこれらが尿蛋白を増やすのか

塩分を摂りすぎると、体の中に水分がたまりやすくなります。すると血圧が上がり、腎臓のフィルターにかかる負担が大きくなります。その結果、フィルターがいたみ、通り抜ける蛋白の量が増えてしまうのです。

高血圧も同じ理屈です。血圧が高い状態が続くと、腎臓のフィルターに常に強い圧力がかかり続けます。体重の増加も、腎臓への負担を増やす要因として知られています。

逆に言えば、塩分を控え、血圧を適切に管理し、体重を整えることで、尿蛋白を減らす方向に持っていけるのです。

まずは「小さな一歩」から

「減塩しましょう」「血圧を下げましょう」と言われると、大変なことのように感じるかもしれません。しかし、最初から完璧を目指す必要はありません。

たとえば、こんなことから始めてみてはどうでしょうか。

  • 味噌汁を1日2杯、朝夕と飲んでいるなら、1日1杯にしてみる
  • 血圧手帳をつけ始めて、自分の血圧を知ることから始める
  • おかずの味付けに、塩や醤油の代わりに胡椒を使ってみる

なぜ減塩や血圧管理が大事なのか。

それは、それが尿蛋白を減らすことにつながり、最終的には腎臓が悪くなるスピードを緩めることにつながるからです。

「価値」がわかると、行動は変わりやすくなります。

「やらされている制限」ではなく、「意味のある選択」として取り組めるようになるのです。

ここがポイント

尿蛋白を押し上げる主な要因は、塩分・血圧・体重。

どれも自分で改善できる余地がある。小さな一歩から始めてみましょう。

まとめ — 尿蛋白は、腎臓の”これから”を映し出すサイン

尿蛋白とは、腎臓のフィルターが傷んでいることを知らせるサインです。

そして、尿蛋白が大事なのは、腎臓が悪くなる「スピード」を映し出す指標だからです。尿蛋白が多いほどスピードは速くなりやすく、少なければ経過は緩やかになりやすいです。

尿蛋白について知ることで「じゃあスピードを緩めるために何をしよう?」という方向性が見えてきます。

そして、その方向性の中心にある塩分・血圧・体重は、自分自身の力で改善できるものです。

今日からできること3つ

  1. 健診結果の尿蛋白の欄を確認する — 「尿蛋白」と書かれた欄を探してみてください。(+)や(++)と書かれていたら、一度かかりつけの先生に相談してみましょう。
  2. 次の外来で「尿蛋白はどうですか?」と聞いてみる — 通院中で尿検査もしているかたは、一度この言葉をかかりつけの先生に投げかけてみてください。病院によっては、尿蛋白を定量(数値で評価)しています。ただ、それがどの欄のことかはわかりにくいです。先生に聞くことで教えてもらえるかもしれません。
  3. 塩分を少しだけ意識してみる — まずは味噌汁を1杯減らす、漬物を1日おきにする、など小さなことから。完璧でなくて大丈夫です。

参考文献

  • Lower estimated glomerular filtration rate and higher albuminuria are associated with mortality and end-stage renal disease. A collaborative meta-analysis of kidney disease population cohorts. Lancet. 2010, 375, 2073-81.
  • Association of kidney disease outcomes with risk factors for CKD findings from the Chronic Renal Insufficiency Cohort (CRIC) study. Am J Kidney Dis. 2014, 63, 236-43.
  • A randomized trial of dietary sodium restriction in CKD. J Am Soc Nephrol. 2013, 24, 2096-103.
  • Blood pressure lowering in type 2 diabetes a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2015, 313, 603-15.
  • Effect of blood pressure lowering and antihypertensive drug class on progression of hypertensive kidney disease results from the AASK trial. JAMA. 2002, 288, 2421-31.

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