この記事を書いた人

のぼじん|腎臓内科専門医 | CKDガイドラインシステマティックレビュー委員
医学論文や診療ガイドラインに基づいた情報発信を大切にしています。CKDと向き合うには、検査値を知ることに加えて、食事・運動・服薬・通院などを生活の中で続ける工夫も大切です。このブログでは、CKDの検査値の見方や生活習慣の考え方、努力だけに頼らず行動を続けるための仕組みを、専門医の立場から一緒に考えていきます。

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のぼじん|腎臓内科専門医 | CKDガイドラインシステマティックレビュー委員
医学論文や診療ガイドラインに基づいた情報発信を大切にしています。CKDと向き合うには、検査値を知ることに加えて、食事・運動・服薬・通院などを生活の中で続ける工夫も大切です。このブログでは、CKDの検査値の見方や生活習慣の考え方、努力だけに頼らず行動を続けるための仕組みを、専門医の立場から一緒に考えていきます。
「腎臓の数値が悪い」と言われたけれど、元気で体調も特に変わらない——この記事を読めば、慢性腎臓病がどんな病気なのか、そしてなぜ症状がなくても放置してはいけないのかがわかります。
相談者さん健診で腎臓の数値が悪いと言われて不安できました。



それは不安になりますよね。
まずは慢性腎臓病がどのようなものか一緒に確認していきましょう。
こんな経験はありませんか?
健康診断で「腎機能が少し落ちている」と書かれていた
かかりつけの先生に「腎臓の数字がよくない」と言われた
でも体は元気だし、痛いところもない
「本当に病気なの?」とピンとこない
この記事では、そんなあなたの疑問を解決します。
この記事では、腎臓内科専門医として日々の外来でお話していることをまとめました。
「慢性腎臓病とはどんな病気か」「なぜ元気でも放置できないのか」「まず何をすればいいのか」——この3つがわかるように構成しています。


慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)とは、腎臓の働きが慢性的に低下している状態、または腎臓に何らかの異常が続いている状態を指します。
「慢性腎臓病」と聞くと、特別で重い病気のように感じるかもしれません。しかし、日本では成人の約5人に1人がCKDを有するといわれています。決して珍しい病気ではないのです。


CKDの原因はさまざまですが、その多くは糖尿病や高血圧など生活習慣によるものです(勿論、生活習慣とは別の原因で糖尿病や高血圧になるかたもいます)。
腎臓がとても悪くなると透析というものが必要になってきますが、上の図は透析が必要となった原因をみたものです。みていただくとわかるように、最近は糖尿病性腎症や腎硬化症で透析が必要となる人が増えています。
糖尿病性腎症は糖尿病が原因で腎臓が悪くなることで、腎硬化症は高血圧や加齢、肥満、脂質異常症などによる動脈硬化が原因でおこります。
特別な腎臓の病気というよりも、生活習慣の積み重ねの結果として腎機能が落ちていくケースが多いのです。
つまり、CKDは「ある日突然かかる病気」というよりも、長い年月をかけて静かに進んでいく病気です。だからこそ、早い段階で気づくことがとても大切になります。
CKDは成人の5人に1人。多くは生活習慣病の積み重ねの結果として発症します。


CKDの最大の特徴は、進行してもなかなか症状が出ないということです。
外来では、患者さんから「痛くもないし、しんどくもないから大丈夫です」と言われることが少なくありません。お気持ちはとてもよくわかります。体に異変がなければ、「本当に通院が必要なの?」と疑問に思うのは自然なことです。
しかし、ここがCKDの怖いところです。
腎臓は 「沈黙の臓器」 と呼ばれています。腎機能がかなり落ちるまで、だるさや食欲低下、吐き気といった自覚症状が出にくいのです。症状が出る頃には、すでに病状がかなり進行していることを意味します。
つまり、「症状が出てから病院に行こう」と思っていると、気づいたときには選択肢がかなり限られている——そういうことが起こりうる病気です。
「症状がない=大丈夫」ではありません。
CKDは症状が出る前に検査で見つけ、早めに対策することが重要です。
海外の研究ですが、中等度の腎機能低下がある患者さん達(CKDのステージ3)でも「自分は腎臓が悪いと言われたことがある」と答えた人は10%もいなかったという報告があります。
日本にそのまま当てはめることはできませんが、CKDの認知度が低いことを示す象徴的なデータです。多くの方が、自分の腎臓に問題が起きていることに気づいていないまま過ごしている可能性があるのです。


ここまで読んでくださった方は、CKDの特徴について少しわかってきたのではないでしょうか。
実はこのように、病気について知ることは、腎機能の低下を抑えることにつながるということは研究でも示されています。
理由はシンプルです。
病気の仕組みや対策の価値がわかると、人は自然と行動を変えられるからです。
「塩分を控えましょう」と言われても、なぜ塩分が腎臓に影響するのかがわからなければ、なかなか続きません。
しかし、「塩分を控えることで腎臓の悪化を緩やかにできる」と理解できたら、「それなら少し気をつけてみようか」と思えるのではないでしょうか。
一緒にCKDについて学び、腎臓病の進行を抑えませんか?
一方で、気をつけたいことがあります。
CKDと診断された直後は、多くの方が「腎機能が下がっている」「将来、透析になるのではないか」と不安を感じます。しかし研究によると、時間が経つと「たいしたことない」「生活に支障のないもの」と認識が変わっていく傾向があることがわかっています。
症状がないだけに、一度聞いただけでは危機感が持続しにくいのです。
だからこそ、定期的にCKDの情報に触れることが必要です。
そのためにこのブログを使ってもらえばと思います。
ソクラテスの有名な言葉に、「何が善であるかを知って、悪をなすものはいない」というものがあります。
少し大げさかもしれませんが、本質は同じだと考えています。
病気について正しく知ること、その対策の価値がわかること。それが、食事に少し気をつけてみよう、検査を受けてみよう、という行動の原動力になります。
慢性腎臓病(CKD)は、成人の5人に1人がかかっている、決して珍しくない病気です。
しかし、最大の特徴は症状が出にくいこと。「元気だから大丈夫」ではありません。症状がない今だからこそ、病気について知り、定期的に検査を受けることに大きな意味があります。
知ることは、治療の第一歩です。
この記事を読んでくださったあなたは、もうその第一歩を踏み出しています。