このブログでは、慢性腎臓病(CKD)と向き合う方やそのご家族に向けて、腎臓病の基本、検査の見方、食事や生活習慣の工夫を、腎臓内科専門医の立場からわかりやすくお伝えします。
このブログでは次のような内容を発信していきます。
- 慢性腎臓病とはどんな病気か。症状がなくても放置できない理由
- eGFR、クレアチニン、尿蛋白など、検査の数字の見方
- 減塩、体重管理、運動といった生活習慣の工夫、外食との付き合い方など
- むくみ、だるさ、受診の目安など、日々の困りごとへの考え方
- コーヒーは飲んでいいの?お酒は飲んでいいの?といった素朴な疑問
- 家族として支える立場で、どうすれば良いサポートができるのか

腎臓は、命に関わる大切な臓器です。しかも、多くの場合、症状がないまま静かに悪くなっていきます。一方で、食事や体重、血圧など、日々の生活の積み重ねで経過が大きく変わる臓器でもあります・・・。
IgA腎症による腎臓病で通院していた30歳代の男性がある日を境にぱったりを病院に来なくなりました。もともと自己管理が良いほうではなく、食生活も乱れがちなかたではありましたが、5年後、全身のむくみと呼吸困難が出現し救急搬送されてきました。既に、末期の腎不全が完成しており、人工透析を避けることができませんでした。血液透析を行うことになり、現在は毎週3回、病院に通院して透析療法を受けています。
高血圧による腎臓病で通院していた70歳代の女性は減塩がなかなかできず、ラーメンやうどんといった麺類、カレーや煮込み料理が大好きでした。塩分が多いため、数種類の血圧を下げる薬を使っていても収縮期血圧は140mmHg程でした。外来では毎回減塩についてお話していましたが、「また次から、頑張ります。」と話され、次のときにはやはり減塩ができていない・・、ということを繰り返していました。当然、徐々に腎機能は低下していき、とうとう透析療法が必要な時期が来てしまいました。今までもそろそろ透析が必要となってきていることはお話していたのですが、本当に透析の準備が必要になったことをお話したところ、目を赤くして、「こんなことならもっと頑張っておけばよかった・・・」と話されました。
医師をしていて、これらのような場面に出会うことはとてもつらいです・・・。ただ、このような場面は決して稀なものではなく、診療の現場でしばしば遭遇します。
近代科学の考え方に影響を与えた哲学者、フランシス・ベーコンは、「知識は力である」と述べました。私は、腎臓病においてこの言葉はとても大きな意味を持つと思っています。腎臓病は、知ることそのものが予防につながる病気です。病気を正しく知り、検査値の意味を知り、生活習慣が将来の腎機能にどう影響するかを知ることが、将来を変える力になるからです。
腎臓病について深く知ってもらうことでこうした瞬間を減らすことが出来るのではないかと思います。
だからこそ、このテーマに特化して発信したいと思っています。
意識しているのは、難しい医学用語をなるべくかみ砕いて伝えることです。そして、「これはダメ」で終わらせず、「では、代わりにどうするか」まで書くこと。忙しい方でも実行できる形にし、読んだその日に一つ変えられる内容にすることです。
外来の診察室でよく聞かれる疑問に、いつでも読み返せる形で答えたい。読んだ方に「まずはここを見れば大丈夫」と思ってもらえる、信頼できる場所を作りたい。そんな思いで、このブログを育てていきます。
はじめまして、のぼじんです

私は腎臓内科専門医として、毎日多くの慢性腎臓病の患者さんと向き合っています。
慢性腎臓病診療ガイドラインの作成に、システマティックレビュー委員として携わりました。世界中の多くの研究論文を一つひとつ読み込み、エビデンスを評価してきた経験から、正しい情報とそうでない情報の違いを肌で感じています。
診療で患者さんと接していると、医学的に正しいことを知るだけでは足りない場面がたくさんあります。忙しい生活の中でどう続けるか、不安が強い時にどう立て直すか、家族とどう支え合うか。そうした現実の悩みまで含めて、一緒に考えることが大切だと感じています。
なぜ慢性腎臓病に特化して発信するのか

腎臓病の中で、特に慢性腎臓病に発信の中心を置いている理由は、慢性腎臓病が生活習慣の影響をとても強く受ける分野だからです。
腎臓の病気には、どの薬を選んで治療するかが特に大切になる病気もあります。一方で、慢性腎臓病は、いわゆる生活習慣病が関わる割合が大きく、日々の食事や体重、血圧、運動、睡眠、通院の継続といった積み重ねが、その後の経過に大きく影響します。
同じような状態で外来に来られた二人の方でも、その後の生活習慣によって、進行のしかたには大きな差が出ます。良い方向に変わる方もいれば、生活のリズムが崩れたことで一気に悪化してしまう方もいます。だから私は、慢性腎臓病は薬だけでは支えきれず、生活の中で何を選ぶかがとても重要な分野だと感じています。
しかし、その大切さを外来の短い時間だけで十分にお伝えするのは簡単ではありません。診察室では検査結果や処方の説明だけでも時間が過ぎていき、生活の中で何に気をつけるとよいのか、なぜそれが大事なのかまで、丁寧に繰り返しお話しするのはどうしても限界があります。
だからこそ、このブログで慢性腎臓病の基礎を整理し、日々の生活で何に気をつければよいのかを、家で読み返せる形でお伝えしたいと思いました。私の外来に通ってくださっている患者さんにも、「まずはこれを見ておけば基礎理解は大丈夫」「どんなことに気をつければよいかがわかる」と言えるような内容にしていきたいと考えています。
忘れられない患者さんがいます

外来で診ていた、肥満関連腎症による慢性腎臓病の患者さんです。肥満関連腎症の場合、減量できるかどうかが、大きく慢性腎臓病の進行に関わります。
その方は、食生活だけでなく生活全体を見直し、減量にも成功されました。するとたくさん出ていた尿蛋白は激減しました。薬も大切ですが、生活が変わることでここまで良くなるのかと、私自身あらためて感じる経過でした。
ところがある日、患者さんの子供が大きな手術を受けることになりました。患者さん自身も不安でいっぱいになりました。強い不安があるときに生活習慣が乱れるのは人として当然のことで、実際、その患者さんの生活習慣も乱れました。私も患者さんの不安な気持ちが十分わかっていたので、今は無理せずで大丈夫ですと伝え、そのときは強く食事について改善を求めるようなことはしませんでした。
子供さんの手術も無事に終わりました。本来であれば、そこでまた生活を立て直せたらよかったのだと思います。一緒に生活習慣を改善しようと診療も繰り返し行いましたが、一度崩れた食習慣は簡単には戻らず、体重も再び増えていきました。そして、せっかく改善していた尿蛋白もたくさん出るようになってしまいました。
この経過中、腎臓病に対して使える薬は必要なものをしっかり使っていました。大きく変わったのは、生活習慣です。私はこの経験から、日々の習慣は腎臓病の経過を本当に大きく変えてしまう力があるのだと痛感しました。
私はこの患者さんを責めたいのではありません。不安が強い時に生活が乱れるのは、誰にでも起こりうることです。だからこそ、同じような後悔を少しでも減らしたい。その思いで、このブログを書いていきます。
忙しい中で続ける難しさを知っているから

私は3人の息子たちの父で、共働きです。仕事が終わって帰宅すると、そこからは育児と家事の時間です。自分のための時間はほとんどありません。
だから、患者さんから「運動したほうがいいのはわかっている。でも時間がない」と聞くたびに、その大変さがよくわかります。特に仕事や育児で疲れた頭で、食事や運動に気をつけることは、簡単ではありませんよね。
私自身、ジムに行く時間はありません。それでも職場ではエレベーターに乗らず、階段を使うようにしています。気持ちが折れそうなときありますが、30分未来の自分は、今エレベーターと階段どちらを選んだときのほうが幸せだろうか?と自分に問いて階段を選んでいます。小さなことですが、それでも体重は3kg減りました。足の筋力もついたように思います。大きなことを一度にやろうとしなくていい。日常の中の小さな工夫でも、積み重なれば体は変わる。私はそれを自分でも実感しています。
だからこのブログでも、完璧な人のための話ではなく、忙しい毎日の中でどう続けるかを大切にしたいと思っています。
ネット情報に感じた危うさ

外来で患者さんから、こんな相談をよく受けます。
「新聞の広告に載っていた腎臓に良いサプリ、飲んでいいですか?」
「インターネットで販売されている○○、食べていいですか?」
こうした相談を受けるたびに、患者さんが広告やインターネット上の情報に大きく影響を受けていることを実感します。
もちろん、ネット上には役立つ情報もたくさんあります。しかし一方で、不安につけ込んだり、不安をあおったりしながら、効果が十分に確かめられていないサプリメントや商品を勧める情報も少なくありません。
私たちが病院で処方する薬は、有効性だけでなく有害事象も含めて厳密に評価され、比較対照のある検証を経て初めて「効果がある」と判断されます。それに対して、市販の商品や広告の中には、一部の体験談や限られた変化だけを強調して販売されているものもあります。
どの情報に根拠があり、どの情報に注意が必要なのかを見分けるのは、専門家でなければ簡単ではありません。腎臓病で不安を抱える方やご家族にとって、このブログが信頼できる情報のよりどころになれたらと思っています。それも、このブログを続ける大切な理由です。
一緒に、一段ずつのぼっていきましょう

「のぼじん」という名前には、階段を一段ずつのぼるように、無理なく前向きにCKDケアを進めていきたいという思いを込めています。
このブログを通して私が目指しているのは、慢性腎臓病と向き合う方やご家族が、不安のまま情報に振り回されるのではなく、正しい知識をもとに「今日、自分は何を変えればいいか」を考えられるようになることです。
完璧を目指す必要はありません。今日から一つ変える。その積み重ねで、防げるはずだった腎臓病の悪化を減らし、透析に進む人を一人でも減らしたい。それが、このブログで私が目指していることです。
このブログが、あなたとご家族にとって、無理なく続けられる一歩を見つけるための場所になれば嬉しいです。
一緒に、一段ずつのぼっていきましょう。