この記事を書いた人

のぼじん|腎臓内科専門医 | CKDガイドラインシステマティックレビュー委員
医学論文や診療ガイドラインに基づいた情報発信を大切にしています。CKDと向き合うには、検査値を知ることに加えて、食事・運動・服薬・通院などを生活の中で続ける工夫も大切です。このブログでは、CKDの検査値の見方や生活習慣の考え方、努力だけに頼らず行動を続けるための仕組みを、専門医の立場から一緒に考えていきます。

この記事を書いた人

のぼじん|腎臓内科専門医 | CKDガイドラインシステマティックレビュー委員
医学論文や診療ガイドラインに基づいた情報発信を大切にしています。CKDと向き合うには、検査値を知ることに加えて、食事・運動・服薬・通院などを生活の中で続ける工夫も大切です。このブログでは、CKDの検査値の見方や生活習慣の考え方、努力だけに頼らず行動を続けるための仕組みを、専門医の立場から一緒に考えていきます。
「eGFRって何の数字?」——この記事を読めば、健診や外来で目にするeGFRの意味がわかり、自分の腎臓の”今の状態”を読み取れるようになります。
相談者さん健診の結果にeGFRって書いてあったんですが、これってなんですか?



大事な数字なのに、説明を受ける機会は意外と少ないですよね。一緒に確認していきましょう。
こんな経験はありませんか?
この記事では、そんなあなたの疑問を解決します。
腎臓内科専門医として、日々の外来でeGFRを使って患者さんに腎臓の状態をお伝えしています。その説明の仕方をまとめました。
eGFRは、腎臓がどれくらい働いているかを推算した数値です。正式には「推算糸球体濾過量(すいさんしきゅうたいろかりょう)」といいますが、正式名を覚える必要はありません。eGFRは採血検査のクレアチニンという項目と年齢、性別から計算されます。
ややこしいことを書きましたが、大切なのは、eGFRが「腎臓の今の力」を数字で見える化してくれるということです。
-1024x572.webp)
-1024x572.webp)
私は外来で患者さんにこのように説明しています。
「eGFRは、100点満点のテストの点数のようなものです。高いほうが良くて、腎臓が悪くなると点数が下がっていきます。」
実際には100を超えることもありますが、イメージとしてはこれで十分です。
ポイントは以下の2つです。



私のeGFRは34って書いてあるんですが、これはどう捉えたらいいですか?



34ということは、腎臓の100点満点のテストの点数が34点になっているということです。ご自身のイメージと比べてどうですか?
こうやって数字をお伝えすると、「え、そんなに悪いんですか?」と驚かれる方がとても多いです。体は元気なのに、腎臓の点数は思ったより低い。このギャップに気づくことが、実はとても大切なのです。
eGFRは腎臓の「今の力」を数字で見える化したもの。
60点未満が3ヶ月以上続くと慢性腎臓病となります。


GFR区分というのは、このeGFRという数字を、わかりやすく段階に分けたものです。
| eGFRの値 | GFR区分 | ガイドライン上の呼び方 |
|---|---|---|
| 90以上 | G1 | 正常または高値 |
| 60〜89 | G2 | 正常または軽度低下 |
| 45〜59 | G3a | 軽度〜中等度低下 |
| 30〜44 | G3b | 中等度〜高度低下 |
| 15〜29 | G4 | 高度低下 |
| 15未満 | G5 | 高度低下〜末期腎不全 |
ただ、これeGFRだけで腎臓の状態を全て把握出来るわけではありません。
G1〜G2でも、尿蛋白・血尿・画像異常など他の腎障害所見があればCKDです。
CKDの重症度を確認するのに尿蛋白も非常に重要になってきます。尿蛋白については別の記事で詳しくお伝えしますね。
G5は腎代替療法(透析や腎移植)を考える区分ですが、G5になったからすぐに必要というわけではありません。
細かいステージ分類を覚える必要はありませんが、自分がこの表のどのあたりにいるか一度確認してみてください。また、G1〜G5という呼び方を知っておくと医師との対話はスムーズになるかもしれません。


eGFRは”今”の腎臓の力を表す数字です。もちろん、絶対値も大事なのですが、実際の診療で私が重視しているのは、前回の数字との比較です。
たとえば、eGFRが50点だったとします。
同じ「50点」でも、前回と比べて安定しているのか、下がっているのかで、意味がまったく違います。
大事なのは「前回と比べてどうか」。
eGFRは一度きりの数字ではなく、変化の流れで読むものです。
テストでも、「今回60点だった」という事実よりも、「最近、勉強のやる気がなくて、前回80点だったのに今回60点まで下がってしまった」のか、「前回は20点しかとれなかったけど、集中して勉強したら、今回は60点をとることができた!」では、全く意味合いが違うと思いませんか?
eGFRについても同じです。
eGFRの元になるクレアチニンという検査値は、実はちょっとしたことで変動します。
食事の内容、水分の摂り方、体調、運動量——こうした日常的な要因で、4〜5%程度は自然に揺れることが研究で報告されています。
つまり、前回と数字が少し違っていても、それだけで「悪くなった」とは限らないのです。



前回よりeGFRが2点下がっていたんですが、悪くなっているんでしょうか?



2点程度の変化は、日常的な揺れの範囲内であることが多いです。もちろん私たちは引き続き注意していきますが、今回の結果だけで心配しすぎなくて大丈夫ですよ。


では、どのくらい変わったら注意が必要なのでしょうか。
一つの目安として、eGFRが前回と比べて15%以上変化していたら「意味のある変化かもしれない」 と考えましょう。
この数字の根拠として、国際的な腎臓病のガイドラインでは20%を一つの基準としています。この基準でもいいのかなとは思うのですが、腎臓領域の有名な雑誌に掲載された論文では約15%前後が目安としても書かれています。そこで、私は厳しいほうの15%の基準を採用して日々診療しています。
下がることは心配ですが、15%以内のゆらぎは起こるものと考えて、日々の検査の小さな変化で一喜一憂せずに落ち着いて行動しましょう。
eGFRが少し下がっている——そんなとき、不安になるのは当然です。
ただ、ここまで読んでいただいたように、eGFRには自然な揺らぎがあります。それを知らないと、ほんの少しの低下で気持ちが大きく揺らいでしまいます。
なぜ「落ち着いて」とお伝えしているかというと、不安が強い状態は、腎臓病との長い付き合いにとって不利に働くからです。
過去の報告でも、心理的苦痛が強いことは、食事の自己管理が悪くなること、運動量が少なくなること、薬の飲み忘れが増えることと関連していることが示されています。
『どうしよう』という焦りに背中を押されるやり方は、長く続ける生活習慣の管理にはあまり適していません。
落ち着いて自己管理を継続できるようにしていきましょう。
eGFRとは、腎臓の「今の力」を100点満点のテストのように数値化したものです。
漠然と「腎臓が悪いらしい」と感じるのと、「今は○点で、前回と比べてこうだ」とわかるのとでは、まったく違います。自分の現在地が見えれば、次に何をすべきかも見えてきます。
eGFRは、そのための大事な道しるべです。